2005年03月29日

深沢七郎 / 楢山節考

本を読んで涙が出る、という経験は殆どないのですが、この作品を読んだときは涙がこぼれました。

この作品は、姥捨て伝説を小説にしたものです。

舞台となる時代がいつの頃なのかわからないのですが、親を山に棄てに行くなんて、現代の感覚では考えられない残酷な仕打ちに思えます。しかし、それを現代の価値観で断罪することは出来ません。ぎりぎりの貧困、村社会の因習を背景としたなかで、そうする他ない状況があったわけです。

そういった状況では、皆(今の感覚からいえば)人間性が失われてしまうかというとそうではなく、棄てられる母親と、母を棄てに行く息子、その両者の心遣いが痛いくらい伝わってきます。

終盤、母を背負って雪山を行く場面はなんどもこみ上げてくるものがありました。圧倒的な白の世界が目の前に広がり、その情景とあいまって。

このように書くと、お涙ちょうだいの湿っぽい作品かと思われそうですが、そうではなく非常にドライで、第三者的な醒めた視点から綴られているような印象を持ちました。

ごつごつとして洗練されていない、でもだからこそ深いところまで響く作品だと思います。
posted by siesta at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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